インタビュー
INTERVIEW
人とちゃんと向き合いたい
「今の仕事してるのは正直流れですし、インタビューされるほどのエピソードはないですよ(笑)」
そう言って明るく笑うのは、人材派遣事業の責任者である濱口。
もともと学校がらみの仕事に就きたいと思っていた彼が、今は建設現場で働く派遣スタッフの人生と真剣に向き合っている。
最初は、成り行きだった。まさかここまでやるとは、自分でも思っていなかった。その根っこにあったのは、昔から変わらずある「人とちゃんと向き合いたい」という想いと、「任されたからにはちゃんとやる」という誠実さだ。
人材派遣とアウトソーシング事業について
カイクラフトの人材事業は、大きく2つの柱から成る。ひとつは、施工管理・CDAオペレーターといった専門職の派遣。もうひとつは、20代から70代まで幅広い年代の作業員を対象とした現場作業の業務請負(アウトソーシング)業である。登録者は延べ12,000名を超え、現在も全国で1日あたり約250名が稼働している。業務はスキルに応じてグレード分けされており、即戦力から育成枠まで柔軟に対応可能。クライアントの急な人材ニーズにも応える機動力と、密な現場コミュニケーションによる定着率の高さが特長で、最長20年以上勤続するスタッフも多い。毎年2回開催される大規模な安全研修の実施や、有資格取得の支援も積極的に実施し支援体制も充実している。
濱口 佳弘はまぐち よしひろ
教育業界を経てカイクラフトへ入社。未経験から建設派遣事業を担い、現在は全国250名以上のスタッフを支える責任者に。現場との信頼構築を大切にし、採用から定着、育成までを一貫して担当。丁寧な対話を重ね、登録スタッフとクライアントの双方に寄り添う“教育者型リーダー”として、現場の声に向き合い続けている。
「生徒一人一人に向き合えない。」数字を追いかける日々への違和感
学生時代は教職課程を履修し、教育の道を志していた。新卒では“家庭教師の教材販売”を行う会社に入社。数字を追いかける毎日に、いつしか違和感を覚えた。
「最初は2〜3人だった生徒のフォローも、気づけば40人、50人に増えていって。ちゃんと一人ひとりに向き合えない。それがすごく辛かった」
濱口が思い描いていたのは、ひとりひとりと丁寧に向き合う教育だった。だからこそ、“教育系の仕事”として入社した会社に、最初は期待もしていたという。
実際、最初は少人数の生徒を担当し、成績や進路に寄り添うことができていた。だが、業績が上がるにつれて担当する生徒は増えていき、フォローの手が回らなくなっていく。
「気づけば、営業ノルマに追われていました。今思えば、いわゆるブラック企業だったんだと思います。でも、新卒で入ったし、会社ってこんなもんなのだろうと思っていました。」
理想と現実のギャップに苦しみ、退職。その後は、沖縄や長野でのリゾートバイト生活を送る。夏は海、冬はスキー。朝昼晩のご飯と温泉付きの生活に、肩の力を抜く時間もあった。
「それはそれで、めっちゃ楽しかったですよ(笑)」
そんな“漂うような数年”ののち、友人の紹介でカイクラフトに出会う。
初めての人材派遣事業との関わり
最初に配属されたのは、キネコ国際映画祭のスタッフ。その後、社長の田平から人材派遣事業への異動を打診された。
「どんな事業かも分かってなかったですけど……これもご縁だし、与えられたからには、やり切ってみようと。」
最初は未経験から始まったキャリアであったが、派遣スタッフとの向き合い方には、濱口が大切にしている考え方が滲み出た。
「それこそ、先生と生徒な関係を築きたいなって思っていたのかもしれません。採用面接でも”できる・できない”をジャッジするのではなく、”育てる・続けさせる”を大事にしています。せっかく一度来てくれた人なんだから、諦めたくない。途中で、ダメだって見限るんじゃなくて、どうすれば続けてもらえるかを考えたかった。」
濱口は、現場でのトラブルも、「めんどくさいけど好きではある」という。スタッフと喧嘩したことも、罵られたこともある。だが、その後に信頼が芽生える。
「スーツで現場に立って、一緒に作業したこともあります。そうすると、お前、意外とやるじゃん、って言われたりします。」
現場の職人さんたちは、どこかで「どうせお前ら、クーラーの効いた部屋でパソコン叩いてるだけだろ」と思っているところがある。だからこそ、本当に泥臭く、誠実に現場と向き合う姿勢が試される。
「それこそ、俺たちの苦労なんてわかってないだろ、って言われたこともあります。でも、話して、向き合って、ぶつかったあとに、仲良くなれる瞬間があるんです」
そうした、面倒を楽しむ姿勢が、スタッフとの連帯感を育んでいる。
現場とのコミュニケーションの量と質が、自社の強み
カイクラフト人材事業の強みは、日々の現場とのコミュニケーションの多さだ。朝夕の発着連絡、シフト組み連絡、請負内容の指示などをきめ細やかに行っている。
「平均、250名の登録スタッフ全員と、毎日必ず連絡を取っています。」
“A君、1週間まとめてここね!”というような丸投げのコミュニケーションは絶対にしないという。現場には営業も足を運び、朝礼に参加する。現場の空気を感じ、スタッフとの信頼関係を築く。
結果として、20年以上在籍している登録スタッフが40名以上在籍しているという。
「この会社は居心地がいい、優しい人が多い、って言ってもらえるのは、うれしいですね」
また、年に2回の安全研修も実施。熱中症や怪我といった事故を全くゼロにするのは難しくとも、事例共有や当事者の登壇を通じて、“自分ごと化”を促している。
「仲間が話すことで、ちゃんと届く。それが、スタッフとして続けてもらえる土壌になるんだと思います」
クライアントとの信頼も、“なんとかする力”から
建設業界では、人手不足が深刻な課題となっている。
それでも、工期は待ってくれない。決められた期日に向けて、現場はなんとしても人を揃えて作業を終わらせなければならない。
ある日、お得意様から17時過ぎに「急な依頼で“明日までに終わらせたいのでなんとかかできませんか?”と新宿の本社に電話がかかってきた。シフトを組む関係で通常は15時までの受付だが、横浜の支店と連携して対応を実現した。そんな時、「カイクラフトが最後の砦のようになれたらと思います。」
こうした対応の積み重ねにより、”濱口さんだったら大丈夫”と言ってもらえるようになった。
現場を動かす“人”に、まっすぐに向き合い続ける
「手に職をつけたいと思っている人には、できる限りのサポートをしたいと思っています。
“できる・できない”じゃなくて、“どうすればできるようになるか”を一緒に考える。それが僕のスタンスです」
スタッフ一人ひとりの可能性を信じ、続けていける環境を整える。
濱口の仕事ぶりには、かつて夢見た“教育者”としての片鱗がにじんでいる。
人を信じて、見守り、支える──それが、濱口のリーダーとしての形だ。
一方で、クライアントに対しても、現場を止めないための柔軟な対応力を大切にしている。
「現場にはいろんな想定外が起こります。でも、なんとかするのが僕たちの仕事。
いただいた要望には、できる限り応えていきたい。小回りを利かせて、現場が止まらないように支え続けたいです」
登録スタッフと、クライアント。
どちらにも誠実に、まっすぐに向き合うことでしか築けない信頼がある。
濱口は今日も、現場を動かす人の背中を押し続けている。